はじめに
FXトレードでは、利益を得るために、どこかでリスクを引き受けなければなりません。相場を眺めているだけでは損失を避けられますが、利益が生まれることもありません。その一方で、利益を求める気持ちが強くなりすぎると、本来は見送る場面でもポジションを持ちたくなります。
そのため、トレードを続けるうえでは「攻めること」と「守ること」の両方が必要になります。ただし、両者のバランスは、いつも同じではありません。攻めと守りを半分ずつに分ければよいという単純な話でもなく、相場の状況や自分の状態によって、その比重は変わります。
英語の「balance」には、均衡や釣り合いという意味があります。私はFXにおけるバランスも、二つの要素を固定された割合で保つことではなく、そのときの状況に合わせて釣り合いを取り直していくことだと考えています。
FXトレードにおける「攻めること」
FXで攻めるというと、積極的にポジションを持つことや、大きな利益を狙うことが思い浮かびます。しかし、私が考える「攻めること」は、ただ取引回数を増やすことではありません。自分が見てきた形が現れ、条件が整った場面で、損失の可能性を受け入れたうえでエントリーすることです。
どれだけ慎重に相場を見ても、結果を事前に確定させることはできません。水平線やチャートパターン、時間帯などを確認し、補助として移動平均線を見たとしても、エントリーしたあとに想定と反対へ動くことはあります。それでも、自分の条件に沿った場面で注文を出すには、不確実な相場へ資金を置く覚悟が必要です。
条件が整っているにもかかわらず、損失を恐れて見送り続けていると、自分の手法を実際の相場で生かせません。負けを避けようとする気持ちが強くなりすぎれば、守っているつもりが、判断することそのものから離れてしまいます。必要な場面でリスクを引き受けることも、トレードを続けるための一つの力だと思います。
「守ること」は、損失を完全になくすことではない
一方、FXにおける守りは、何があっても負けない状態をつくることではありません。相場に参加する以上、損失を完全になくすことはできないからです。私にとって守ることは、損失が起こり得るという前提に立ち、自分が引き受けられる範囲を越えないようにすることです。
エントリーできそうな形に見えても、判断材料が揃っていなければ見送る。想定が崩れたときは、その事実を受け入れる。相場が大きく動いていても、焦って後を追わない。このような判断は、一見すると利益を得る機会を手放しているように見えますが、資金と判断力を次の機会へ残す行動でもあります。
守りを意識していると、目の前の一回だけでなく、その先のトレードまで考えられるようになります。一度の損失を取り返そうとして次の取引を急げば、普段なら見送る場面にも手を出しやすくなります。守る対象は資金だけではなく、自分が積み重ねてきた判断の基準も含まれているのだと思います。
攻めと守りは、反対側にあるものではない
以前の私は、攻めと守りを反対の行動として捉えがちでした。攻めるなら積極的に動き、守るなら取引を控える。そのように分けると、どちらか一方を選ばなければならないように感じます。
しかし、トレードを続けるなかで、攻めと守りは一つの判断のなかに同時に存在すると考えるようになりました。条件が整った場面でエントリーするのは攻めですが、事前に損失の範囲を考えておくのは守りです。含み益が伸びているときに値動きを見守るのは攻めでありながら、相場の変化に応じて利益を残すことは守りにもつながります。
守りがあるから、必要な場面で攻められます。反対に、攻める場面を選んでいるからこそ、それ以外の時間を静かに見送る意味も生まれます。二つは互いを打ち消すものではなく、一つのトレードを成り立たせる両側の働きなのだと思います。
バランスは、いつも五分五分ではない
バランスという言葉からは、攻めと守りを同じ割合に保つ状態を想像しやすいかもしれません。しかし、相場は常に同じ状態ではありません。値動きの方向が見えやすいときもあれば、上下に振られて流れを捉えにくいときもあります。
自分の見ている条件が揃い、値動きにも納得できる場面では、普段どおりにエントリーを考えられます。一方、水平線の周辺で方向が定まらず、どちらへ進むのか判断しにくい場面では、守りの比重が自然に大きくなります。そこで無理に攻めと守りを同じ割合に戻そうとすれば、取引すること自体が目的になってしまいます。
相場に勢いがあるから攻める、動きが小さいから守るとも限りません。大きく動いたあとほど、すでに入りやすい価格を過ぎていることがあります。反対に、静かな相場でも、自分が待っている条件に近づいていることがあります。値動きの大きさだけではなく、自分の判断基準との距離を見ながら、攻めと守りの釣り合いを考える必要があります。
自分の状態によっても釣り合いは変わる
攻めと守りのバランスを決めるのは、チャートの状態だけではありません。同じ値動きを見ていても、自分の身体や気持ちの状態によって、受け取り方が変わることがあります。
睡眠が足りていないときや、身体に重さを感じるときは、普段なら気づける違和感を見落とすことがあります。反対に、損失の直後で気持ちが落ち着いていないときは、小さな値動きまで取引の機会に見えてくることがあります。チャートが同じでも、見ている自分が同じとは限りません。
そのような日は、相場だけを見て攻めるかどうかを決めるのではなく、いまの自分が普段と同じように判断できているかも確認します。守りの比重を大きくすることは、弱気になることではありません。自分の状態を含めて、その日に合う釣り合いへ戻すことだと捉えています。
利益ではなく、判断の偏りを見る
攻めと守りのバランスは、一回の利益や損失だけでは判断しにくいものです。積極的にエントリーして利益になったとしても、条件の揃っていない取引であれば、攻める側へ偏っていた可能性があります。慎重に見送ったあとで相場が大きく動いても、その時点で条件が足りなかったのなら、守った判断が間違いだったとは限りません。
結果だけを見ていると、利益になった行動はすべて正しく、損失になった行動はすべて誤りに見えます。しかし、それでは相場の偶然と自分の判断を分けられなくなります。大切にしているのは、利益になったかどうかだけではなく、自分がどのような理由で攻め、どのような理由で守ったのかを見ることです。
取引を振り返るときも、「もっと積極的に入ればよかった」「慎重になればよかった」と結果から考えるだけでは、次の判断につながりにくくなります。入る条件は揃っていたのか、見送った理由は明確だったのか。その過程を見直すことで、自分のバランスがどちらへ傾いていたのかが少しずつ見えてきます。
まとめ
FXトレードにおける攻めとは、やみくもに取引を増やすことではなく、条件が整った場面で不確実性を引き受けることです。守りとは、損失を完全になくすことではなく、資金と判断の基準を次の機会へ残すことだと考えています。
攻めと守りのバランスには、固定された形がありません。相場の状態が変われば釣り合いも変わり、自分の状態によっても比重は動きます。ある日は攻める場面が多くなり、別の日は何もせずに終わることもあります。
相場に合わせて自分まで揺れ続けるのではなく、その都度、攻めと守りの位置を確かめる。私にとってのバランスとは、二つを均等に保つことではなく、いまの状況に合う釣り合いを静かに探し続けることです。


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