はじめに
英語で「trading conditions」と表現すると、値動きの大きさや流動性、トレンドの有無といった市場環境を指すことがあります。ただし、この記事で扱う「コンディション」は市場環境ではなく、トレードに向かう自分自身の状態です。
チャート上に狙っていた形が現れていても、自分が普段と同じように相場を分析し、判断できるとは限りません。睡眠が足りていない日や、食後の眠気が残っている時間、疲労が積み重なっているときには、相場の動きを普段とは違う捉え方をすることがあります。また、判断に時間がかかったり、反対に判断を急いだりすることもあります。
私はFXトレードを続けるなかで、手法や市場環境を確認するだけでなく、自分が「ready to trade(トレードできる状態)」にあるかを確かめることも大切だと考えるようになりました。自分がトレードできる状態にあるかを確認するために記録しているのが、睡眠・食事・疲労です。
相場を見る前に、自分の状態を見る
以前の私は、身体の状態を細かく意識しながら生活していたわけではありません。学生のころから食事のあとによく眠たくなっていましたが、それを特別なことだとは考えていませんでした。食事をすれば眠くなるのは当然だと思っていたからです。
自分の身体に意識を向けるきっかけになったのは、結婚後、妻から「寝ているときに呼吸が止まっている」と指摘されたことでした。耳鼻科を受診したところ、睡眠時無呼吸症候群と診断されました。それからは睡眠や食事を含め、自分の身体の状態と向き合うようになりました。
睡眠時無呼吸症候群の改善に取り組むなかで、集中力は気合だけで保てるものではないと感じました。強い眠気があり、頭がぼんやりしていると、目の前のことに集中しようとしても限界があります。眠気や身体の不調が残っている状態では、物事を考えること自体にも負担がかかります。
このことは、FXトレードでも変わりません。相場分析を始める前に、その日の自分がどのような状態にあるのかを確認します。私にとってコンディション管理は、トレードとは関係のない健康管理ではありません。落ち着いて相場を分析し、判断するための準備の一つです。
睡眠は、時間と目覚めたあとの感覚を記録する
睡眠を記録するとき、最初に確認しやすいのは睡眠時間です。何時に寝て何時に起きたのかを記録しておけば、何時間眠ったのかを確認できます。ただし、私は睡眠時無呼吸症候群を経験したことから、長い時間眠ったからといって、十分に休めているとは限らないと考えています。
そのため、睡眠時間だけでなく、目覚めたあとの身体の感覚も記録しています。起きたときに頭がすっきりしているのか、身体に重さが残っているのか、午前中から眠気があるのかを確認します。こうした身体の感覚を数字で表すことは難しいですが、短い言葉で記録しておくだけでも、その日の状態をあとから確認しやすくなります。
記録するときに大切にしているのは、その場で原因を決めつけないことです。「睡眠時間が短かったから、今日のトレードはうまくいかない」と最初から結論を出すのではなく、まずは睡眠時間や目覚めたあとの身体の感覚を、そのまま記録します。その記録を実際のトレード記録と照らし合わせると、睡眠や身体の状態が、トレード中の集中力や判断にどのように関係しているのかを確認できます。記録を続けることで、自分に見られる傾向が分かることもあります。
よく眠れなかった日でも、落ち着いてトレードできることはあります。反対に、睡眠時間を確保できていても、相場分析を整理できず、エントリーするか見送るかといった売買の判断が定まらない日もあります。一日分の記録だけで原因や傾向を決めず、毎回同じ項目を記録し続けることが、自分のコンディションを知る手がかりになります。
食事は、内容だけでなく食後の変化も見る
食事の記録というと、食べたものを一つずつ細かく書き出す方法を思い浮かべるかもしれません。しかし、トレード前のコンディションを確認することが目的であれば、料理名や栄養素をすべて記録しなくても、必要な情報を残すことはできます。
私が特に意識しているのは、何を食べたのか、いつ食べたのか、食後に身体や頭の状態がどのように変わったのかという点です。食後に眠気が出た、頭がぼんやりした、身体が重く感じたといった変化があれば、食べたものや食べた時間とあわせて記録します。
私は学生時代から食後の眠気を感じていましたが、長いあいだ、それを当たり前のこととして受け入れていました。睡眠時無呼吸症候群と診断され、自分の身体を見直すようになってからは、食後の眠気についても考え方が変わりました。単に「食べたから眠くなった」と片づけず、食後に自分の身体がどのように変化したのかを確かめるようになりました。
食べたものや食後の身体の変化を記録すると、食事をした時間とトレードを始めた時間の関係も確認しやすくなります。たとえば、食後すぐにチャートを見た場合と、食事から少し時間を置いてチャートを見た場合では、集中のしやすさが異なることがあります。この記録は、食事の良し悪しを決めるためのものではありません。自分がどの時間帯であれば、落ち着いて相場を見られるのかを知るためのものです。
疲労は、身体と行動の両方に現れる
疲労は、睡眠時間のように一つの数字で表すことが難しいものです。身体が重い、目が疲れている、呼吸が浅く感じるなど、疲労の現れ方は日によって異なります。また、身体に強い疲れを感じていなくても、相場分析や売買判断を整理しにくくなることがあります。
疲労の影響は、トレード中の行動に現れる場合もあります。何度も同じ時間足を見直す、普段なら待てる場面で判断を急ぐ、少しの値動きが気になってチャートから離れられなくなるといった行動です。こうした行動の原因が、必ず疲労にあるとは限りません。それでも、普段とは異なる行動として記録しておけば、自分の状態を振り返る手がかりになります。
私は「疲れている」だけで記録を終わらせず、身体の変化と行動の変化を分けて記録するようにしています。「目が疲れている」「呼吸が浅く感じる」「普段より判断を急いでいる」と具体的に書いておくと、あとから読み返したときに、そのときの状態を思い出しやすくなるからです。
疲労を記録する目的は、自分の弱い部分を探すことではありません。身体や行動が普段と異なることに早めに気づき、その状態でトレードを続けるのか、少し休むのか、その日は相場を見るだけにするのかを考えるためです。
トレード記録と重ねて振り返る
睡眠・食事・疲労の記録だけを見ていても、それぞれの状態がトレードにどう関係していたのかは分かりません。エントリーした時間や根拠、エントリー後の値動き、決済までの経過などを残した通常のトレード記録と照らし合わせることで、自分のコンディションとトレードの関係を確認できます。
市場環境と自分のコンディションは、分けて記録しておくと整理しやすくなります。市場環境の記録には、値動きの大きさや方向性、狙っていたチャートパターンなどを残します。自分のコンディションの記録には、睡眠の状態や食後の変化、疲労の程度などを残します。エントリー後に相場が自分の想定とは反対に動いたのか、それとも自分の分析や売買判断が普段とは異なっていたのかを、曖昧なまま同じ原因として扱わないためです。
ただし、自分のコンディションとトレードの損益を、単純に結びつけないようにしています。体調がよい日でも損失になることはあり、疲れているときに行ったトレードが利益になることもあります。トレードの結果は、自分のコンディションだけで決まるものではないからです。
振り返るときに確認するのは、利益になったか損失になったかだけではありません。あらかじめ決めていた条件がそろうまで待てたか、根拠のないエントリーをしていなかったか、決済まで計画に沿って行動できたかも確認します。損益と判断の過程を分けて振り返ることで、睡眠・食事・疲労の状態が、相場分析や売買行動にどのように現れていたのかを確認しやすくなります。
記録は細かくしすぎず、続けられる形にする
コンディションを確認するための項目を増やしすぎると、記録すること自体が負担になります。睡眠の深さ、食事の内容、体温、気分、集中力など、記録しようと思えば項目はいくらでも増やせます。しかし、細かく記録したからといって、自分の状態とトレードの関係が必ず分かりやすくなるとは限りません。
私は睡眠・食事・疲労を中心に、その日のトレードに関係していたと感じることを短く記録する方法が、続けやすいと考えています。「よく眠れた」「昼食後に眠気があった」「夕方から目が疲れた」といった短い記録でも、続けていれば過去の状態と比べるための材料になります。
コンディションの記録は、自分を厳しく評価するための採点表ではありません。調子の悪い日を否定するためのものでも、毎日を理想的な状態に整えるためのものでもありません。その日の自分がどのような状態だったのかを、あとから確認できるように残しておくものです。
記録を続けていると、トレードを始める前に「相場にチャンスがあるか」だけでなく、「いまの自分はトレードできる状態にあるか」と立ち止まって確認できます。私にとって、この短い確認もコンディション管理の一部です。
まとめ
この記事でいう「trading condition(トレードのコンディション)」は、市場環境ではなく、トレードに向かう自分自身の状態です。睡眠・食事・疲労を記録し、通常のトレード記録と照らし合わせることで、トレード前の身体の状態と、実際に行った分析や売買判断を一緒に振り返れるようになります。
コンディションを記録したからといって、損失を避けられるわけではありません。また、いつも同じ状態で相場に向かえるようになるとも限りません。それでも、判断が普段とは異なっていたときに、損益だけを見て振り返りを終わらせず、睡眠・食事・疲労が判断に関係していなかったかを考える材料にはなります。
市場の値動きを自分で変えることはできませんが、いまの自分がどのような状態にあるのかは確認できます。私にとってコンディションを記録することは、身体の状態とトレード中の判断を別々のものとして扱わず、自分の判断や行動を長い期間にわたって振り返るための習慣です。


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